マンションのエレベーター交換時期は17年ではない?プロが教える「損しないタイミング」の見極め方

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「管理会社からエレベーターの交換を提案されたけれど、見積もりの金額を見て愕然とした」

「築17年を迎えたけれど、今のエレベーターは特に故障もなくスムーズに動いている。本当に今、数千万円もかけて交換する必要があるのだろうか?」


マンションの管理組合やオーナー様にとって、エレベーターのリニューアルは修繕計画の中でもトップクラスに大きな出費です。だからこそ、「まだ使えるなら使い続けたい」と考えるのは当然のことですし、大切な修繕積立金を無駄にはしたくないという思いも強いはずです。


でも、もし「17年」という数字だけで判断しているとしたら、少しもったいないかもしれません。逆に、「動いているから大丈夫」と放置してしまうと、ある日突然、取り返しのつかない事態に陥るリスクもあります。


本当の交換時期はいつなのか?

コストを抑えつつ、安全を守るための最適なタイミングはあるのか?


その答えは、法律上の期限と、機械としての寿命、そして部品の供給状況という3つの視点を組み合わせることで見えてきます。この記事では、業界のプロが現場で用いる判断基準を、専門用語を使わずにわかりやすくお伝えします。


【要点まとめ】

  • 「法定耐用年数17年」は税金計算上の基準であり、即交換の期限ではない
  • 実際の寿命はメンテナンス次第で延びるが、20年を超えるとリスクが高まる
  • 最も注意すべきは故障よりも「メーカーによる部品供給の停止」
  • 適切な診断を行えば、全面交換ではなくコストを抑えた改修も可能


【目次】

  • 「まだ動くのに、なぜ交換?」管理組合が抱えるジレンマとリスク
  • 法定耐用年数17年の真実と、物理的な寿命の違い
  • 最も警戒すべきは「20XX年問題」。メーカーの部品供給停止とは?
  • 「丸ごと交換」だけじゃない。コストを抑える賢い選択肢
  • 独立系メンテナンス会社という選択肢。メーカーに依存しない柔軟な提案
  • 安全と資産価値を守るために、まずは「現状診断」から




■「まだ動くのに、なぜ交換?」管理組合が抱えるジレンマとリスク

マンションの管理組合において、エレベーターの改修工事ほど議論が紛糾するテーマはありません。その最大の理由は、なんといっても費用の高さです。数百万円から、場合によっては一千万円を超える工事費用は、修繕積立金に大きなインパクトを与えます。「外壁塗装や配管工事も控えているのに、今すぐエレベーターにこれだけのお金を使うべきなのか?」という声が上がるのも無理はありません。


特に難しいのが、多くのケースで「エレベーターはまだ普通に動いている」という事実です。目に見えてボロボロだったり、頻繁に止まったりしていれば、住民の皆様も交換に納得しやすいでしょう。しかし、日本のエレベーターは非常に優秀で、適切な点検を受けていれば20年近く経っても快適に動作することがほとんどです。「壊れていないものを捨てるなんてもったいない」という感覚は、生活者として極めて正常なものです。


しかし、ここに大きな落とし穴があります。エレベーターは、ある日突然「寿命」を迎えるわけではありません。人間が健康診断で体の不調を見つけるように、機械にも目に見えない疲労が蓄積しています。もし、「動かなくなるまで使う」という判断をしてしまった場合、いざ故障したときに部品が手に入らず、数週間から数ヶ月もの間、エレベーターが一切使えない「完全停止」の状態に陥るリスクがあるのです。


特に高層階に住む高齢者や、ベビーカーを利用する子育て世代にとって、エレベーターのない生活は想像を絶する苦労となります。費用の節約を優先した結果、生活のインフラが断たれてしまっては本末転倒です。このジレンマを解消するためには、「なんとなくの先延ばし」ではなく、明確な根拠に基づいた「戦略的な判断」が必要になります。




■法定耐用年数17年の真実と、物理的な寿命の違い

エレベーターの交換時期について調べると、必ずと言っていいほど「17年」という数字が出てきます。管理会社からの提案書にも、この数字が根拠として書かれていることが多いでしょう。しかし、この「17年」という数字の意味を正しく理解している人は意外と少ないのが現状です。


実は、この17年というのは「法定耐用年数」と呼ばれるもので、主に税金の計算(減価償却)をするために国が定めた一律の基準に過ぎません。「17年経ったら機械として壊れる」という意味でもなければ、「17年で交換しなければならない」という法律上の義務でもないのです。極端な話をすれば、設置環境が良く、使用頻度が少なければ、25年以上現役で稼働しているエレベーターも世の中にはたくさん存在します。


では、本当の寿命、つまり「物理的な寿命」はどれくらいなのでしょうか。一般的には、適切なメンテナンスを継続して行っていることを前提に、20年から25年程度が目安と言われています。もちろん、これはあくまで平均的な目安であり、海沿いのマンションで塩害を受けている場合や、大規模なタワーマンションで24時間ひっきりなしに稼働している場合などは、これよりも早く劣化が進むこともあります。


ここで重要になるのが、「法定耐用年数を超えたら、いつ壊れてもおかしくない期間(摩耗故障期)に入っている」という認識を持つことです。18年目以降は、メインのロープが伸びたり、電子基板のコンデンサという部品が劣化したりと、人間で言えば関節痛や視力の低下が出てくるような時期です。


以下のチェックリストを使って、お住まいのマンションのエレベーターの状態を一度確認してみてください。もし当てはまる項目があれば、年数に関わらず専門家による診断が必要なサインかもしれません。


【これが出たら要注意!エレベーターの「お疲れサイン」チェックリスト】

  • 起動時や停止時に「ガクン」という揺れや衝撃を感じる
  • 走行中に「キーキー」「ゴゴゴ」といった異音がする
  • 以前よりも、扉が開閉するスピードが遅くなった気がする
  • 目的の階に着いたとき、床とカゴの間に数センチの段差ができる(着床ズレ)
  • 操作盤のボタンの反応が鈍い、またはランプが切れかかっている


このように、エレベーターの寿命は「17年」という固定された数字ではなく、日々の稼働状況やメンテナンスの質によって変わる「変動する数字」なのです。




■最も警戒すべきは「20XX年問題」。メーカーの部品供給停止とは?


ここまで、エレベーターには「物理的な寿命」があるとお話ししましたが、実はそれ以上に恐ろしい、強制的に交換を余儀なくされるタイムリミットが存在します。それが、メーカーによる「部品供給の停止」です。業界では、これがある特定の年に集中することから「20XX年問題」などと呼ばれることもあります。


エレベーターは数万点の部品からなる精密機械ですが、その心臓部とも言える制御盤やモーターなどの重要部品は、メーカーが製造を打ち切った後、一定期間(概ね20年〜25年程度)しか在庫を保管していません。この保管期間が過ぎると、メーカーにはもう交換用の部品が存在しないことになります。


これが何を意味するか、想像できるでしょうか。例えば、ある日エレベーターの電子基板がたった一枚故障したとします。通常であれば部品交換で数万円、数時間で直るようなトラブルです。しかし、メーカーに部品の在庫がなければ、「修理不能」と宣告されてしまいます。たった一つの小さな部品がないために、エレベーター全体を新品に交換するしか方法がなくなるのです。


しかも、エレベーターの交換工事は、契約してからすぐに着工できるわけではありません。オーダーメイドで機器を製造するため、発注から工事開始まで半年以上かかることも珍しくありません。つまり、部品がない状態で故障してしまうと、「半年間、階段だけで生活してください」という最悪のシナリオが現実になってしまうのです。


「うちはしっかり点検契約をしているから大丈夫」と思われている方もいるかもしれませんが、保守契約を結んでいても、メーカーにない部品はどうすることもできません。メーカーからは、部品供給停止の数年前から「のお知らせ」が届いているはずですが、専門的な内容であるため、管理組合の引き継ぎの中で見過ごされてしまうケースが多々あります。


以下のポイントを確認し、自分たちのマンションがこの「部品供給停止リスク」にさらされていないかを見極めることが、理事会やオーナーの最も重要な責務と言えるでしょう。


  • 現在のエレベーターの製造年はいつか?
  • メーカーから「保守部品の供給終了予定」に関する通知文書が届いていないか?
  • 管理会社任せにせず、直接メーカーやメンテナンス会社に「部品はいつまであるか」を問い合わせたか?


この「部品のリミット」こそが、物理的な故障以上にシビアな、本当の交換時期の決定打となるのです。しかし、逆に言えば、このリミットさえ正確に把握できていれば、慌てて工事をする必要はありません。計画的に準備を進めるための猶予期間を手に入れることができるのです。




■「丸ごと交換」だけじゃない。コストを抑える賢い選択肢


「エレベーターの交換」と聞くと、現在のエレベーターをすべて取り外して、ピカピカの新品に入れ替える工事をイメージされる方が多いのではないでしょうか。もちろん、予算が潤沢にあればそれが一番ですが、現実には数千万円単位の費用がかかるため、二の足を踏んでしまう管理組合様がほとんどです。しかし、実はエレベーターのリニューアルには、すべてを交換する「全撤去」以外にも、コストを抑えられる賢い選択肢が存在します。それが「制御リニューアル(部分改修)」という手法です。


エレベーターは、大きく分けて「建築物に固定されている部分(レールや枠、カゴ室そのもの)」と、「動かしたり制御したりする部分(モーター、制御盤、ロープ、ケーブル)」の2つに分類できます。前者の金属部品は非常に頑丈で、適切に手入れされていれば30年、40年と使い続けることが可能です。一方で、後者の電気・機械部品は先ほどお話しした通り20年程度で寿命を迎えます。


制御リニューアルとは、まだ使えるカゴやレールなどの「箱」部分はそのまま活かし、劣化しやすい心臓部(制御盤やモーター)や、安全に関わる重要部品だけを最新のものに入れ替える工事です。この方法には、全撤去と比べて大きく3つのメリットがあります。


  1. コスト削減:使える部品を流用するため、全撤去に比べて費用を3割から5割程度抑えることが可能です。浮いた予算を、防犯カメラの設置や内装のリフォーム(化粧シート貼りなど)に回すこともできます。
  2. 工期短縮:全撤去の場合、工事期間は1ヶ月近くに及ぶこともありますが、制御リニューアルであれば1週間程度(最短で5日ほど)で完了するケースもあります。住民の方々の「階段生活」の負担を大幅に減らせるのは大きな利点です。
  3. 環境への配慮:大型の廃棄物を減らすことができるため、SDGsの観点からも時代に合った選択と言えます。


もちろん、著しく老朽化が進んでいる場合など、全撤去が望ましいケースもありますが、多くのマンションではこの制御リニューアルが現実的かつ合理的な解決策となっています。「交換=全取っ替え」と思い込まず、自分たちのマンションに合った工事範囲を見極めることが重要です。




■独立系メンテナンス会社という選択肢。メーカーに依存しない柔軟な提案


リニューアルの手法と併せて知っておいていただきたいのが、「誰に工事を頼むか」というパートナー選びの視点です。一般的にエレベーターのメンテナンスや工事は、そのエレベーターを製造したメーカー系列の会社に依頼するものだと思われがちです。しかし近年、メーカーとは資本関係を持たない「独立系メンテナンス会社」を選ぶ管理組合が増えています。


なぜ、あえて独立系を選ぶのでしょうか。その最大の理由は「メーカーに縛られない柔軟な提案力」と「コストパフォーマンス」にあります。


メーカー系の会社は、当然ながら自社の純正部品と決まったパッケージプランでの提案が基本となります。安心感は抜群ですが、どうしても費用は高止まりしがちですし、「まだ使える部品もまとめて交換」というオーバースペックな提案になることも少なくありません。


一方で、私たちのような独立系の専門会社は、特定のメーカーの都合に左右されません。国内全メーカーの機種に対応できる技術力(ノウハウ)を持っており、「この部品はまだ使えるから残しましょう」「ここは汎用品を使ってコストを下げましょう」といった、マンションごとの予算や事情に合わせたオーダーメイドの提案が可能です。純正部品と同等の性能を持つ高品質な部品を独自に調達することで、安全性を維持したまま、大幅なコストダウンを実現することも珍しくありません。


また、技術者(エンジニア)の視点から見ても、独立系企業には大きな魅力があります。特定のメーカーの製品しか触れない環境とは異なり、あらゆるメーカー、あらゆる年代の機種に触れ、その構造を深く理解する必要があります。そのため、応用力のある本物の技術力が身につくのです。「マニュアル通りではない、現場ごとの最適解を見つけ出す」という仕事の面白さは、この分野ならではのものでしょう。


コストを抑えたい管理組合様にとっても、技術を磨きたいエンジニアにとっても、独立系という選択肢は、これからの時代のスタンダードになりつつあるのです。


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■安全と資産価値を守るために、まずは「現状診断」から


ここまで、エレベーターの交換時期を見極めるための視点や、コストを抑える方法についてお話ししてきました。最後に改めてお伝えしたいのは、エレベーターの管理において最も危険なのは「無関心」と「放置」だということです。


「動いているから大丈夫だろう」

「管理会社が何も言ってこないから問題ないだろう」


そう思って過ごしている間に、目に見えない劣化は確実に進行し、部品供給停止のタイムリミットは刻一刻と迫っています。いざ故障して止まってしまったとき、困るのはそこに住んでいる住民の皆様自身です。逆に言えば、早めに関心を持ち、正しい知識を持って準備をしておけば、無駄な出費を抑えながら、マンションの資産価値と快適な生活を守り抜くことができます。


いきなり工事の契約をする必要はありません。まずは、現在のエレベーターの状態がどうなっているのか、部品の供給期限はいつまでなのかを正しく把握することから始めてみてください。そして、メーカー系の見積もりだけでなく、独立系専門会社の話も聞いてみることを強くおすすめします。セカンドオピニオンとして別の視点からの診断を受けることで、「本当に必要な工事」と「適正な価格」が見えてくるはずです。


エレベーターは、マンションの心臓です。その心臓を長く、健康に動かし続けるために。まずはプロの診断を受けて、現状を知るという第一歩を踏み出してみませんか?


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